2008-08-29

LOIとPoint of No Return

企業買収を扱っていると、法的拘束力を持つPoint of no returnを意識して、Due Dilligenceを行い条件設定をした上で、交渉に入ります。

案件ごとに買収プロセスは異なるとは思いますが、Strategic Buyerとしては、まず事業上の価値があるのか否かを見極めるところから入ります。ファンドや機関投資家のように純投資として見ることはなく、自社事業とのシナジーが期待できるのか、対象会社のサービス提供能力を活用できるのか、事業領域/事業提供エリアの拡張に寄与できるのか、優良な顧客を抱えているのか、買収により離れていくと想定される顧客がどれくらいいるのか・・・と様々な角度から見ていくことになります。

そのBusiness Due Diligenceをより精緻に行うために、対象会社とNDA(守秘義務契約)を締結して、内部情報を得て、関連性のあるサービス主管の担当者を巻き込みながら、シナジーを検討します。

その結果、買収する価値があると判断した場合、Valuationを踏まえて、LOI(関心表明書)を出します。これは法的拘束力がないと明示して提示します。
LOIには、買収価格、買収ストラクチャー、雇用条件、排他的交渉期間などが記載されます。もちろん詳細条件はこの先の交渉を踏まえて変わっていきますし、そもそも法的拘束力のないものですので、後戻りも可能です。

ただ、Non bindingで出すLOIと言えど、一度提示した買収価格をそれよりも下げるのことは実務上難しいのが実情です。特に上場会社の場合は、市場環境に左右されて株価が著しく下がることがあって、実際昨年からのサブプライムローンに端を発した金融収縮によってLOI提示時の株価よりも足元の株価がだいぶ下がってしまい、LOIの提示価格のプレミアムが50%を超えるケースがあったりします。

特に市場環境が悪化している最近は買収案件自体が少なくなっていますが、その中でも50%超のプレミアムを払っている案件は見かけません。そうなると、LOI提示価格で買収することを説明することが難しくなり、社内的にはかなり厳しい立場に追い込まれます。

それでも、もしそのDealをつかみに行こうすると、価格を下げたLOIを出さざるを得なくなります。しかし、M&Aの商習慣上LOIの提示価格を下げることはない訳で、ジレンマに陥ることなります。

法的拘束力のないはずのLOI、でも実務上は価格の下方弾力性は低く、買収をやめることはできるものの、価格に関しては実質的にPoint of No Returnということなのでしょう。

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